

大学在学中に起業、ドロップアウトして大成功・・・・・・IT企業ではこんな話をよく耳にする。今回紹介するテラサイクル社もそういう創業者を持つが、「若きIT長者」のスマートなイメージはない。なにしろ彼は「ゴミ」と「ミミズ」にまみれて働いているのだ。
テラサイクルの創業者兼CEO、トム・スザキーはハンガリー生まれで、7歳のとき両親とともにカナダに移住した。彼は14歳でウェブデザインの会社を興すなどビジネスに強い関心を抱いていたが、当時はまさか「ゴミ」で仕事をすることになるとは思っていなかった。人生を変えたのは、トムが留学していたプリンストン大学での、ある週末の出来事だ。
その日、友人の部屋で行われたパーティに出ていたトムは、キッチンで土の入った容器をみつけた。何に使うものか不思議に思ったトムが友人に聞くと、ワーム・コンポスト(ミミズ堆肥)だと言う。生ゴミをミミズにやると、有機物を分解して排泄物という形で上質な天然肥料をつくってくれるのだ。ゴミが役に立つ素晴らしいものに変身する様に、トムは感銘を受けた。そして彼は「これをビジネスにしよう」と考え始めた。
2001年、トムと友人のジョン・バイエルは、大学寮の自分の部屋でテラサイクル社(Terracycle Inc.)を創業した。コンセプトはシンプル。「ゴミを加工して、役立つ製品にする」というものだ。
初めてトム達が手がけたのは、プリンストンの学食からゴミをもらい、それをミミズの力を借りて肥料にするというプロジェクトだった。プロトタイプは”Worm Gin(ワーム・ジン)”と名付けられた。これの“生産”にひととおり成功したところで出資者が現れた。もう後には引けない。03年、トムは大学を辞め真剣に経営に乗り出した。

テラサイクルが企業として最初に成功を収めたのは、ワーム・ジンの発展形である肥料「オール・パーパス・プラント・フード」によって。できた飼料は液体化し濃縮した。でも同社がスゴいのはここからだ。「製品原材料がゴミ」というだけでなく、「何もかもゴミ」でつくったのだ。
プラント・フードの容器は、牛乳パックやソーダボトルだ。リサイクルで集めてきたコーラやペプシのボトルを洗い、ラベルを貼りかえ、プラント・フードを詰めて出荷する。スプレーやキャップは大企業の不用品や製造し過ぎた余り物を流してもらった。また、自分達の製品を使い終わった後は、そのボトルを再び回収し、何度も製品として生まれ変わらせるシステムも構築した。これは、消費者が使用済みボトルなどのゴミを集めて送料無料の箱に入れて同社に送ると量に応じて褒賞金が支払われるというものだ。消費者が負担なくエコに協力できるようになっている。

この製品循環システム(彼らはupcyclingと呼ぶ)をいたく気に入ったのが、ホームセンター最大手のホーム・デポだ。同社が04年からプラント・フードを販売開始したのをきっかけに、ウォルマートやホールフーズといった大企業も販売するようになり、経営が波に乗った。
以来テラサイクルは、ガーデニング用品、清掃用品、暖炉用燃料、そして文房具類とバッグ類を、次々とゴミから誕生させている。その多くは、プラント・フードで構築したのと同様なゴミの回収システムを通じて製造されている。たとえばヨーグルト容器はホームセンターで植物販売に使う植木鉢に、シリアルのプラスチック袋はファンキーな柄のシャワーカーテンになる。
創業から8年。同社は従業員50名にまで成長し、08年は約8百万ドルを売り上げた。もちろん彼らの挑戦はこの規模では終わらない。目指すのは「エコ・キャピタリズム」だ。つまり、「自然界から原材料を得て、公害を起こしつつ作った最終生産品がゴミになる」資本主義(キャピタリズム)のあり方を、「ゴミを原材料とし環境に負荷をかけないよう作った最終生産品がまた原材料になる」環境資本主義に変えていきたいのだそう。
道は険しい。市場に数え切れないほどある商品のうち、ゴミの回収システムが機能し ているのはまだ8種類に過ぎない。しかしアイデアの尽きないテラサイクルのこと、 これからも様々な解決策を考え出してくれるだろう。ゴミとミミズにまみれて働く、 28歳のエコ社長のこれからが楽しみだ。